PGIトピックス

プラチナ・レポート1

優れた性質から
「原器」の素材に選ばれたプラチナ

2018.11

「サイエンス・スクエア つくば」へ行ってきました

サイエンス・スクエア つくば

サイエンス・スクエア つくば

メートル、キログラム、秒、アンペアなど国際基準をもとに使われている世界共通の単位が7つあります。このうち唯一、130年もの間変わることのなかった、重さの単位「キログラム」を定義する基準が変わる!というニュースが、最近話題になりました。

科学界の歴史的な定義改定には日本も関わっていて、度量衡の研究を牽引する国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)が貢献したそうです。その産総研の研究と成果が展示されている茨城県つくば市の「サイエンス・スクエア つくば」へ行ってきました。

長く使われてきた「原器」。その素材はプラチナでした!

展示風景

展示風景

産総研には、国際基準のおおもととなる原器と同じ寸法・材料でつくられている、重さの基準「キログラム原器」と、長さの基準「メートル原器」が保管されています。どちらも1890年にフランスの国際度量衡局から配布されたとても貴重なもの。厳重な管理のもとに保管されていて、職員の人もなかなか見る機会はないのだそうです。

ところで、今回なぜこの原器に注目したかというと、原器に使われている素材です。じつは、プラチナ(白金)90%とイリジウム10%の合金製なのです。プラチナはほかの貴金属に比べると、熱による膨張率が低いのでモノの長さや体積の変化が少なく、長い時間が経っても錆びることがないので変質や変色の心配がありません。その高い安定性から、国際基準の基本単位をあらわす原器の素材に選ばれたのです。実際、今回の改定を機に産総研が保管しているキログラム原器が公開されましたが、130年経った今もきれいな状態が保たれていたそうです。

館内には、それぞれのレプリカが展示されていました

キログラム原器レプリカ

キログラム原器レプリカ

まずは話題となった「キログラム原器」です。直径・高さともに39ミリメートルの円柱形をした小さな金属塊で、それを保護するように二重に容器がかぶせられています。ほこりや指紋ひとつの付着でさえ重さが変わってしまうため、本物を頻繁に出して使うことはできず、実用上では代わりとなるステンレス銅製の参照分銅が使われていたそうです。現在の金属塊のキログラム原器から、新しい重さの定義の基準はプランク定数という物理定数に変わります。

メートル原器レプリカ

メートル原器レプリカ

そして、キログラム原器と並べて展示されていた「メートル原器」。一般的に長さを測る定規のような形ではなく、断面がXの形をした棒状のもの。この形状が歪みを最小限におさえ、より正確な長さをはかるための工夫のひとつだったそうです。メートル原器は1960年まで使われていましたが、現在は光の速さが定義の基準になっています。この原器の価値はのちに改めて認められ、2012年に国の重要文化財に指定されています。2019年5月20日にいよいよ役目を終えるキログラム原器もきっと、メートル原器とともに大切に残されていくことでしょう。

キログラム原器・メートル原器とは

プラチナ(白金)90% イリジウム10%の合金製。
世界中で基準とされる原器には、耐久力が強く、時間の経過と気候の影響がもっとも少ない素材を用いる必要があります。比重が高く、酸化・摩耗しないという化学的安定性や耐腐食性から、その素材として最初から選ばれたのはプラチナでした。
原子番号が隣(Pt-78 Ir-77)で似た特性を持つイリジウムとの合金とすることで、より硬さを増し安定性を高めたと考えられます。

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